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ハハハ、と乾いた笑いが出た。
「そんな笑える名前じゃないと思うけど」
そんな、まさか。こんな偶然があるものだろうか。
そうだ。同姓同名、そうに違いない。
「まさか……コンサルティング会社に務めてた、なんて言わないですよね?」
私の問いに山崎葵と名乗った男は「なんで知ってんの?」と驚きの表情を見せた。
「嘘……」
「だから、冗談でも嘘でもないって。それよりあんた何者?」
信じがたいが私が知る山崎葵とこの人は同一人物のようだ。
「私は市川莉緒。山崎さんの後任のコンサルタントですが何か」
一瞬、この場の空気が固まった。
「嘘だろ……」
「嘘は嫌いです。たとえエイプリルフールだとしても私は嘘をつきません。残念ながらインディアンではなく生粋の日本人ですが」
「安心しろ、インディアンには見えない」
「そうですか。それは良かったです。ではなくてですね。本物の山崎葵だというなら余計に私はあなたを助けるようなことはしたくない。あなたは七瀬さんの敵ですから」
山崎さんは「へえ」と言って、私をじろじろと舐め回すように見た。
「な、なんですか」
「あんた、七瀬さんの事が好きなの?」
カッと顔が赤くなるのがわかった。
「わかりやすいな」
「何がですか」
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