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それから山崎さんは「まあ、あんたじゃ七瀬さんは無理。つか、女を感じない」と失礼極まりないことを真顔で言い放った。
「あなたね! それが命の恩人に言うセリフですか?」
「その件に関しては感謝してる。アリガトウ」
「……棒読みなのは気のせいでしょうか」
「気にするな。まあ上がれよ」
「あれれ。おかしいですね。ここは確か私の自宅では」
「気にするな」
なんという傍若無人。
同じイケメン属性でも七瀬さんとは雲泥の差だ。
今朝、一瞬でも胸をときめかせてしまったことを心の底から後悔した。
「言われなくても上がります」
私は靴を脱ぎ捨て彼の前に立った。
「どいてください。というか出て行ってください」
この廊下は人がすれ違うスペースはない。だが、山崎さんは動こうとしない。
「飯」
「はい?」
「美味かった」
「はあ。それはどうも」
「あんたには女を感じないから居心地がいい」
散々失礼なことを言われた気がするが。そして今まさに失礼なことを言われた気もするが。
「タダでとは言わない。仕事が決まるまでここに置いてくれ」
「断ると言ったはずですが。それにお金持ってないんですよね?」
「ああ無一文だ」
「堂々と言わないでくださいよ」
「おまえ、男を知らないだろ」
フリーズした。
「……だとしても、あなたにはなんの関係もないことです」
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