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「その通りです。今後は距離を取って接してくださると有難いですね。でないと、身を守るために回し蹴りのひとつでも披露してしまうかもしれないので。それと、あなたに対して可愛くする道理がありますか? 食べても構いませんが、食器の片付けはよろしくおねがいします」
「はいはい」
この部屋にはダイニングテーブルはない。
あるのはソファの前に置かれた小さなローテーブルのみだった。
仕方なくソファに並んで座り、所狭しと並べられた食事に箸をつけた。
落ち着かない。
どうしても箸が震えてしまう。
気づかれたらまたからかわれると思い、私は無理矢理会話をすることにした。
「……早速ですが。具体的に何か案はあるのでしょうか?」
「ああ、それについては休日にミーティング考えてるから」
「ミーティング……本格的ですね」
「おまえを変えるのは一筋縄じゃいかなさそうだからな」
「同感ですね。26年間この性格は変わっていませんから」
「おまえ26歳なの?」
「そうですが」
「タメじゃん。これからその敬語やめろよ」
「無理です。あなたと私はいわばビジネスパートナー。あなたがコンサルタントだと言うのなら私はクライアントです。あなたこそ私に敬語を使うべきでは」
「そーかよ」
「そうです」
それから私たちは無言で朝食を食べた。
幸い、手が震えていた事は気づかれなかったようだ。
「では行ってきます」
今日も皺1つないスーツに身を包み、最低限の化粧を施して、肩甲骨まである髪を1つに束ねた。
「ちょっと待った」
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