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「はあ、どうも……って渡したお金でそんなものを買ったんですか」
昼間私がいない間暇だという理由でまた家探しされても困るので、外出用にいくらか現金を渡してあった。てっきり自分に必要なものしか買ってこないと思っていたのだが。
「ついでだ」
「そうですか。では遠慮なく」
元は私の稼いだ金銭なのだから遠慮することなど一切ないのだが。
1人暮らしを始めてから、仕事の忙しさも手伝ってゆっくりと湯船に浸かることなどない。
久しぶりに入った湯船は乳白色のピンク色をしていた。
意外と気が利く。
言われた通りに風呂上がりに顔面にパックを施し、水を飲みにキッチンに向かうと、山崎さんがじっとこちらを見ていた。
性格はどうあれ、これだけのイケメンに見つめられると条件反射で緊張してしまう。パックをしていてよかった。顔の面積のほとんどを隠しているこの状態では表情は読めないはず。強気でいこう。
「なんですか」
「いや、面白いなと思って」
「それはこのパックが某世紀末救世主伝説の主人公の顔を模したものだからです」
目よりも眉毛が太く、やけに凛々しいアレだ。
私が抑揚のない声で答えると、山崎さんは堪らず吹き出した。
「おまえ……パッケージみて文句言うのが普通だろ……」
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