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「俺も市川さんとは次も組みたいな。市川さんの意見はいつも目の付け所がいいから」
そう言ってくれたのは今回初めてチームを組んだ先輩コンサルタントの由井さんだ。
確か私より2年先輩である。
「ありがとうございます。これからも尽力を努めてまいります」
「ちょっと硬いのがたまにキズだけどね。歳も近いんだし、タメ口でいいって言ってるのに」
「すみません。先輩は先輩なので」
私が真面目に頭を下げると、由井さんは苦笑した。
私だってわかっている。
このクソ真面目な性格を疎ましく感じることもある。
特に男性に対してはどうしても硬くなってしまうのは中学、高校と女子校だったからだろうか。
けれど、こんな私だって恋はしたいのだ。
テレビドラマや、少女漫画のような恋がしてみたい。
そう思い続けて、早26年。
培われたのは磨きあげられた妄想力と、天よりも高くなってしまった理想。
こんな私でも容姿には一応気をつけているつもりだ。
清潔感。これに限る。
毎日糊の効いたシャツに皺ひとつないスーツに身を包み、肩甲骨までの長さの髪は1つに結いていて出勤。これでいつ理想の男性に出会っても恥ずかしくない。
真面目に、堅実。この2つをモットーに生きてきた私に、転機というものがある日突然やってきた。
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