1.イケメン拾いました

5/31
前へ
/218ページ
次へ
「七瀬、こちらが話してた市川莉緒さん。市川さん、こいつが俺の同期の七瀬だよ」  林さんから七瀬(ななせ)、と呼ばれた長身の男性が私をその瞳に映す。  あまりの容姿の麗しさに一瞬呼吸をすることを忘れてしまった。 「初めまして、市川さん。七瀬といいます。林からはいつも噂は聞いてます」 「は、初めまして。市川です」  しまった。声が上ずってしまった。  心の中で羞恥に悶絶するも、表面上は冷静を装い頭を下げ、それから名刺を交換した。  七瀬蓮(ななせれん)。  役職は林さんと同じマネジャーだった。  林さんと同期という事は年齢は同じか、そうでなくても近いはずだが、どう見ても20代後半、つまり私と同じくらいに見える。 「突然で申し訳ないんですが、明日からうちのチームでコンサルタントを担当していただきたい」 「失礼ですが、私はまだアナリストでして……」 「人事にも話はつけてあります。明日付けで役職はコンサルタント、所属は横浜支社から東京本社に移ります」  青天の霹靂だった。  通常、アナリストを2~3年経験した後にコンサルタントへ昇進するのだが、私は大学を卒業後2年間のアメリカ留学を経て入社しているので実務経験はまだ1年しかない。 「本社……コンサルタント……」     
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2056人が本棚に入れています
本棚に追加