1.イケメン拾いました

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 ビルの壁面は全て硝子で施され、空をそのまま映すほどに磨かれていた。残念なことに曇り空だが。  ひとつ深呼吸をしてからエントランスへ足を踏み入れた。  その先は駅の改札口のようになっていて、IDカードをタッチしなければ中には入れないようになっている。  そこを通り抜け、エレベーターホールに向かうと「市川さん」と背後から声を掛けられた。  振り向き、姿を見た途端に再び鼓動が早鐘を打ち始めたが、それを悟られないように努めて冷静に会釈をした。 「七瀬さん。おはようございます」 「おはようございます。今日からよろしくお願いします」 「こちらこそ」  そんな挨拶を交わし、12階へと移動した。 「昨日渡した資料は読んだかな」 「勿論です。前任のコンサルタントは優秀な方ですね。システムに無駄がない。退職されたと聞きましたが実に勿体無いです」 「……そうだね」  何故か七瀬さんは歯切れの悪い言い方をした。 「おはよう。皆揃ってるな」  プロジェクトチームが常駐している執務室に入ると、その場にいた3人が一斉にこちらを見た。 「昨日話した市川莉緒さんだ」 「市川です。若輩者ですが、皆さんよろしくお願いします」     
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