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「そういえば最近お昼はお弁当ではなく外食されているそうです。加藤さんが突っ込んでいました」
「ふむ。由美さんと冷戦状態なのは確実か。チャンスだな。おまえ明日から七瀬さんの弁当作れ」
「それは私もちょっと考えましたが……いきなりお弁当を渡すのはおかしくないですか?」
「明日は弁当を持ってきたのにそれを忘れて買ってきてしまったと言え。よかったら食べてくださると助かります。とか言えば七瀬さんは断らない。食べた感想も言ってくるだろう。昔から胃袋を掴めというがそれは事実だ。俺がここにいる1番の理由もおまえの料理が美味いからだしな」
料理が出来て良かった。そうだ、老後は小料理屋でも始めよう。
「上手くすればここで一気に距離が縮まる可能性が高い。心してかかれよ」
「イエスサー」
翌日、いつもよりも2時間早く起床し作った弁当は、気合いが入りすぎてお重になってしまった。
「やりすぎ。花見でも行くつもりか」
「すみません。心より反省しております」
重箱から普通の弁当箱に詰め替えた。メイクも完璧だ。
「では、行ってまいります」
「いってら」
お弁当の残りをつまみながらヒラヒラと手を振る山崎さんに敬礼をして玄関を出た。
空は薄いブルーに染まり、すぐそこに夏が来ていることを感じる。
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