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駅前でパンを2つとコーヒーを買い、準備万端でオフィスへ向かう。
私は脳内で何度も七瀬さんに弁当を渡すシミュレーションを繰り返した。
自然に、違和感なく、けれど確実に渡せる方法を模索する。
加藤さんがいないときを見計らわなければならないのがかなり困難だ。
「市川さん、金曜日は何もなかったでしょうね」
執務室に向かう途中の廊下で私の姿を見た途端加藤さんが駆け寄ってきて詰問してきた。
「おはようございます。七瀬さんは上司として部下を心配してくれただけですよ」
「それはわかってます。ああ私のことも心配してほしい……」
「私は心配してますよ。まさかジェイとお付き合いしているなんて微塵にも思いませんでした。大丈夫なんですか?」
「七瀬さんから聞いたんだ。全然大丈夫ですよ。ジェイも私のこういう性格知ってて付き合ってるんだから。ああ可愛いって罪!」
私は失笑すると執務室へ入った。
すると、七瀬さんのデスクの前に知った顔があった。
「林マネジャーじゃないですか」
私が声を掛けながら近づくと、林マネジャーは片手を上げた。
「市川? なんか雰囲気変わったな。元気にしてたか?」
「そうでしょうか。私は元気です。林マネジャーはお元気ですか?」
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