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「変わった変わった! 彼氏でも出来たか? 俺はおかげさまで元気だよ。今日は本社に用事があったからついでに寄ってみたんだ」
「残念ながら出来てません。そうだったんですね。お話中失礼しました」
「なんだ出来てないのか。いや、今ちょうど市川さんの話を七瀬としてたんだよ。な、七瀬」
七瀬さんの方を見ると、彼は頷いた。
「ちょっと隣の部屋で3人で話そうか」
そう言ってデスクから立ち上がって歩き出した七瀬さんの後ろを、林マネジャーと共について行く。一体何の話だろうか。
「単刀直入に言うと、このプロジェクトが終わったら市川さんに横浜支社へ戻ってほしいとのことだ」
「え……」
私の不安を感じ取ったのか、七瀬さんが慌てて言葉を続けた。
「問題があるわけじゃない。寧ろ能力が高いから横浜支社から戻せと言われたんだ」
林マネジャーを見ると申し訳なさそうに後頭部を掻いていた。
「こっちには本社ほど能力が高い人材が少なくてね。市川さんが戻ってきてくれると助かるんだ」
「そうなのですか……」
別にどこでも仕事は出来るのだが、横浜支社には七瀬さんがいない。
今携わっているプロジェクトの期間はあと3ヶ月。
つまり、秋にはここを去らなくてはならない。
「こっちの都合で振り回して申し訳ない」
2人に頭を下げられた私に文句など言えるはずもなかった。
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