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「わかりました」
その言葉を聞いた林マネジャーはホッとした表情を浮かべて「じゃあまたな!」と言って部屋から出ていった。
「大丈夫か?」
七瀬さんに声を掛けられて自分が情けない顔をしていることに気がついた。
「大丈夫です。少しは残念ですが」
「僕も残念だよ。君とは今後も一緒に仕事をしたかったから」
そう言って私の頭に手を乗せてくれ、柔らかく微笑んでくれたが、私の身体は反対にガチガチに固まっていた。
「あ、ありがとうございます……そう言っていただけるだけで嬉しいです」
「この間」
七瀬さんは頭の上から手を下すことなく話を続けた。
「酔っている市川さんを見て、可愛いなって思った。普段しっかりしてるから尚更かな」
全身から湯気が出そうだ。
「だから安心するといい。僕は既婚者だから無責任なことは言えないだけで君のことを選んでくれる人は必ずいるから」
そう言われて、2人で食事をした時に七瀬さんが私の問いに、ごめんと答えたことを気にしているのだと気づいた。
なんて優しい人なのだろう。
「……ありがとう……ございます」
そっと離れて行く手の体温を意識が追ってしまう。
私に残された時間は僅か3ヶ月。
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