全日本フロドク選手権

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 「さあ、やってまいりました。全日本フロドク選手権のお時間です。実況の湯舟柄郎(ゆぶねつかろう)です」 「解説の範真翼(はんまつばさ)です」 「さて、範真さん。今日のお風呂ですが……」 「狭いですねぇ。いわゆるユニットバスですが、浴槽が小さくて深い。これだと体が折りたたまれますし、体を沈めた時の湯面上昇が激しいですから、長風呂には不利です」 「いわゆる、屈葬型の浴槽ですね」 「このタイプの風呂で良い結果が出た記録はあまりないんじゃないかな」 「それに範真さん、この風呂、蓋がありませんね」 「それは逆に良い事かもしれません」 「どういうことですか?」 「先ほども言いました通り、このタイプは湯面の上昇が激しく、思っている以上に体に熱が回りやすいのが不利な点です」 「はい」 「風呂の蓋がフロドク選手権において重要な役目を果たすのは、本を置くための台と言う以外にもう一つ、保温の意味があります。しかし、屈葬型は思った以上に体に熱が回りやすい。蓋を無くすことで湯温の低下を速め、体にかかる負担を減らすことができる可能性があります」 「なるほど、このタイプでも長湯しやすくなるかもしれないと」 「はい、あくまで可能性です。フロドク選手権に置きましては、湯温が選手の基礎体温を下回らないことがルールに明言されています。ですから、あまりに温度低下が早い場合、早々に失格と言う可能性も出てきます」 「諸刃の剣と言ったところでしょうか」 「まさにその通り。ファーストインでいかに湯温の低下を防ぐか。そこも一つ注目のポイントになりそうです」
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