2人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあ、間もなく選手入湯です。今回のプレイヤーは……ははあ、男性ですね」
「細身ですが……背が高いですねぇ。百八十以上ありそうです」
「確かに。ここで選手のプロフィールを画面でご紹介いたします」
尾関隆文。三十一歳。会社員。独身。一人暮らし。身長百八十五センチ。体重五十五キロ。風呂に入るタイミング、寝る前。好きな小説のジャンル、ミステリー。好きな湯温、四十二度。運動嫌い。偏食気味。好きな女性のタイプ、むっちりした人。昔のあだ名、もやし君。
「いかがですか、範真さん」
「そうですね、やはり身長が高いので、体を折りたたんだ窮屈感によるストレスは避けられないでしょうね。運動嫌いの偏食家、そして昔のあだ名がもやし君と言う所から、耐久力の面に不安があります。ですが、一人暮らしと言う所はポイントが高いですね」
「と、言いますと?」
「ええ、同居人の介入による強制終了がありませんから」
「いわゆる家族ショックですね。確かに過去にも有望なフロドクプレイヤーが、同居人の介入で強制的に風呂を上がらされるというケースがありました」
「この場合、介入があるとすれば、訪問者です。ですが、風呂に入っているときの訪問者は無視でクリアすると思われます」
「確かに。わざわざ裸で応対はしませんね」
「そういう事です。さて、風呂の戸が開きましたね。選手入湯です」
ファンファーレ。
「さあ尾関選手……入ってきました……が、これは?」
「かなり寒そうですね。手に文庫本を持っていますから、このまま入るつもりでしょう」
「かけ湯は無しですか? あ、無しですね。今、ファーストインです」
「これは、良くない入り方ですよ」
「心臓への負担がかかりますからね。最悪死亡リタイアもあり得る危険な入り方でした」
最初のコメントを投稿しよう!