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「さて、今回尾関選手が持ち込んだものですが……文庫本……だけですね?」
「大抵の選手はタオルを一緒に持ち込みますが……ちょっと意外です」
「範真さん。ここでタオルを持ち込む理由について、再度おさらいをさせてください」
「はい。フロドク選手権は大量の汗をかきます。当然その汗は体を動かすことで飛び散ったりするわけですが、これが文庫本にかかると美しくないという事で芸術点にペナルティが課せられます。また、額から流れ落ちた汗が目に入ることを防ぐため、こまめに額を拭くなどにも使われます」
「なるほど。重要なんですね、タオル」
「ええ、大変重要です」
「それを持っていないという事は……」
「かなり不利ですね。更に風呂に蓋がありませんから、表紙が濡れて手が滑ってしまった場合、そのまま本が水没します」
「水没した場合もペナルティがありますね」
「はい、その場合は技術点にペナルティが入ります。技術点は全体の五割を占めていますから、ここでのペナルティは響きます」
「なるほど。このフロドク選手権は、技術点、芸術点、健康点の三種類の点数の合計がその選手の得点となります。技術点は全体の五割。芸術点が三割、健康点は二割の配点となっています。ですから、技術点でのペナルティは相当厳しいという事ですね」
「その通りです」
「ちなみに、技術点ではどのような部分が評価されますか?」
「選手の読書姿勢やタオルの使い方、体を動かしたときにいかに水しぶきが跳ねないか、などです。また、一つの作品を読み終えることで加点される分もここに入ります」
「タオルを持っていない尾関選手、かなり不利ですね」
「おっしゃる通りです」
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