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「さて、タオルを持たず、ファーストインも失敗、更に浴槽は屈葬型と点数の伸びが期待できない尾関選手ですが、早速フロドクを開始しましたね」
「これは、何を読んでいるんだろう。栞の一部らしきものが見えるので、新潮文庫かなぁ……」
「表紙が見えませんね……。入湯のシーンをもう一度見直してみましょう。あっ、これは……」
「これは……。星新一ですね。そうか、その手があった」
「と、言いますと?」
「はい。このフロドク選手権では、作品を一つ読み終えるごとに加点されます。その際、ページ数に対する読了速度なども割合で加味されますが、基本点はどの作品も同じなんです」
「つまり、短い作品だろうが、長い作品だろうが、一つの作品とみなされるものを読み終えれば、一定の点数は加算されるわけですね」
「その通りです」
「という事は、星新一の様なショートショートですと……」
「膨大な加点を見込むことができます」
「これは、ルールの穴をついた見事な一手と言って良いのでしょうか」
「そうですねぇ……。確かに。そもそも風呂で読書する人たちと言うのは、長湯前提なんですよ。半身浴のお供とか。だから、あっという間に読み終えてしまうような作品を選ぶ人は現れなかったんです。すぐに読み終わっちゃったら、長湯できませんから」
「なるほど。確かにその通りですね。これまで、作品読了による加点が無いケースも多々ありました」
「ええ、そうです。ルール側も、一度のチャレンジで多くても十作品には届かないという考えで点数を配分しています。だから……ああ、参ったなぁ」
「範真さんの眉間にしわが寄っております」
「いやぁ、僕もルールの決定に加わった一人ですからねぇ。これは、見落としていたなぁ」
「解説者泣かせのとんだ革命児が現れた物です。これは大幅得点が期待できます」
「早急にルールの見直しが必要ですね」
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