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敦子は、リビングの天井を見上げた。
家の中央にあるこのリビングは、家のどこに行くにも通るようになっている。建築時に最もこだわったことだ。
念願のマイホームの設計に頭を悩ませていたあの頃――ちょこまかと歩き回る長女とまだ乳離れしていない長男を抱えながら、この子たちが成長してそれぞれの世界の方が大きくなったとしても、家の中で自然と顔を合わせられるようにと敦子が強く主張したのだった。
それから、二十年近く経つ。
真っ白だったリビングの天井には、いつできたとも分からない染みが浮いている。住居用洗剤で取れるかしら――。
そう思案したものの、敦子は無理に目を逸らした。
いいや、また今度にしよう。どうせ家族は、天井の染みなどあってもなくても気づかない。
子ども達が小学生だった頃には手作りのおやつ、食べ盛りの中学時代には山盛りの夕食、夜遅くまで部活や受験勉強に明け暮れていた高校時代には夜食が並んでいたダイニングテーブルには、今日も敦子が丹精込めて作った料理が湯気を立てている。
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