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子どもが二人揃って好物だというコロッケは、以前なら帰宅時間に合わせて揚げていたが、適当な時間に全て揚げてしまうようになってから随分経つ。家族がそれぞれてんでに帰宅するためだ。
そればかりではなく、近頃は連絡もなく夕食を採らないこともままある。
今夜もそうだった。
最近コロッケ作ってないねと長男に言われ、長女もお母さんのコロッケ好きなどと調子良く言うものだから作ってやったのに、二人揃って20時を過ぎても帰宅しないどころか、連絡さえない。かわいい子ども達に望まれたからと思って、茹で、炒め、揚げると大別しただけでも3つの工程を含む面倒なものをわざわざ作ったのに、これだ。大人ぶった態度を取るくせに、敦子に甘えすぎていると思う。
それなのに、敦子は厳しい母親だと思われていた。子どもにどころか、夫にも親族にも教育ママだと揶揄されていたことを知っている。
だったら、誰が躾けるというのか。夫は、深夜まで働き、土日も仕事かゴルフか寝ているかのどれかだ。年に数回顔を合わせるだけの親族に、何ができる。
子どもを野放しにすれば勝手に行儀良くするのだったら、敦子だってそうする。誰のお蔭で、これまで大過なく成長し、大学まで行けたのだと思っているのだ。
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