マイホーム

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湯気の収まった食事にラップをかけ、サラダなどは冷蔵庫に閉まっておく。なんだか食欲が失せてしまった。 誰もいない家は、静かだ。冷蔵庫が唸るように話しかけてくる。 冷蔵庫の中にも、敦子が自分だけのために買ったものは入っていない。夫の好むメーカーのヨーグルト、長女が朝食代わりに毎朝飲むオレンジジュース、長男が敦子の手作りのものより食べたがる市販の鮭フレーク。 それから、切らすと子ども達が不機嫌になるアイスクリーム。夫の稼いだお金で、敦子が買ってきているというのに、我がままなものだ。 冷凍庫を子ども達が好き勝手荒らさないように、アイスクリームのために専用のスペースを作ってある。 今、そこにはカップアイスが1つあるきりだった。敦子自身は、夏場でもない限り食べないので、つい忘れていた。また買っておかないと、姉弟喧嘩になるだろう。 けれど、周囲の冷凍食品が整然と並んでいる中で、アイス置き場となっているカゴに1つぽつんと置かれているカップアイスに、なぜか目を惹かれた。この家の中に一人取り残された自分のように思ったのかもしれない。仲間意識のようなものか。 ――食べてしまおうか。 失せていたはずの食欲だが、つるりと甘いものなら食べてみたい気がした。     
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