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口うるさい教育ママに辟易していたのは、他ならぬ自分自身だったことに、敦子はとっくに気づいていた。
カップアイスとスプーンを持って、洗面所に置いておく。
裸になって髪と体を洗ってから、アイスを持ってきた。浴槽の蓋をテーブル代わりにして、カップを置く。
冷凍庫から取り出したときには、カチコチに固まっていたアイスは程よく融けていた。カップを押すと、アイスの周囲がくにゅりと融けて立ち上がる。そこにスプーンを差し込んで、ぐるりと一周させた。
そんな食べ方も、子どもの頃母親に注意されて以来だ。
半分ほど融けたアイスをうっとりと見つめてから、口に入れた。ほてった口内に冷たい甘味が広がる。
おいしい。
ほっと一息ついて、浴室を見渡した。
さほど大きくはない、一般的な浴室だ。5年ほど前にリフォームして以来、掃除には気を遣っているから、カビ一つない。
敦子は、そうしてこの家を守ってきた。
この家は、私が守ってきた。私のものだ。たとえ家族がたまにしかいなくなっても、まぎれもない私の城。
湯気の籠もり始めた浴室が、裸の敦子を守ってくれているような気がした。
のぼせる前に、急いでアイスを食べる。
背徳的な楽しみは、既にない。スリルを楽しむ感性は、敦子にはそぐわないのだ。
ベタベタとした甘さに辟易しながらも何とか食べ終え、風呂を出る。
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