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しかし、気持ちはさっぱりとしていた。
髪をしっかり乾かしてから風呂場を後にし、カップを捨てようとキッチンに続くリビングへと入った。
「あ、お母さん、ただいま」
「あら、帰ってたの、二人とも」
長女と長男が揃って、ダイニングテーブルに座っていた。
何食わぬ顔をしながら、さりげなく手元のカップとスプーンを隠す。
「コロッケだって言ってくれたら、早く帰ってきたのに、何で連絡してくれないんだよ」
「私も、ご飯食べて来なかったのに」
「だって、あなたたち今日ご飯いらないだなんて言わなかったじゃない」
「お母さんも、お父さんと一緒に温泉行ってると思い込んでたんだよ」
「お父さんは、会社の人と行くって言ってたでしょ」
「聞いてなかった」
自分勝手な言い訳をしながら、二人ともむしゃむしゃとコロッケを食べている。山を成していたコロッケは、半分ほどに減っていた。
「お父さんも、もっと早く連絡くれたら良かったのに」
「お父さんから連絡があったの?」
敦子には、今朝家を出てから、メールの一つもない。子ども達と頻繁に連絡をするような話も、聞いたことがなかった。
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