epilogue:RITSU

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「そんな驚くなよ。律から子供の話を聞いて、ずっと考えてたんだ。子供を引き取る可能性もあるかもしれないって。そのとき俺はどうすればいいのかって」  九条の大きい手のひらが、律の頬を包み込んだ。やっぱり彼の手は暖かい。大好きな手だった。急に鼻の奥がツンとした。 「正直、不安とか怖さとか――マイナスな考えもあるよ。だけど結局俺はさ」  一度言葉を切って、九条が律の背中に腕をまわした。ふたりの胸に挟まれたわが子が、きゃっきゃと楽しそうに笑い声を立てた。 「律の幸せが俺の幸せだって思うから。だから、律がこの子と一緒にいたいって思うなら、俺もそう思える」  九条の真剣な眼差しを受け、律の目から涙が浮かんだ。ぶわりと視界が滲んでいく。  自分は彼に愛されているのだと――強く感じた。彼の言葉に戸惑いも嘘もないと、信じられる。 「律、結婚しよう。戸籍が取れたらすぐに」 「お――おれで、いいの?」 「おまえが良いんだよ。俺には律しかいない。律は? 俺と結婚したい?」  したいに決まっている。  律は、震える唇を大きく開いた。  はい、と答えたいのに、感泣のせいでしゃっくりみたいな声しか出てこない。だから一生懸命、九条にわかるように頷いた。 「神に誓ってもいい。一生律だけだって」  ああ、でも――と九条が続けた。     
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