Ritsu Kujo(小野田視点)

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 子供の話は振らないほうが良いかもしれない。彼らから話してくれればもちろん聞きたいが。 「ええ。俺の父親がバトー地区に住んでいるので遊びに来てるんです」  朗らかな笑みを浮かべる九条さんには、本当に尖がった部分がない。あのエリート然とした表情、仕草が一切ない。  ふたりともだいぶ変わっている。この三年で。 「今はどこに住んでるんだい?」 「ナナセイ地区です。農業をやっています」  九条さんが言うと、田中くんが察したように名刺を両手で渡してくる。 『K&K FARM』  黒文字で印字された、シンプルな名刺だった。隅にはQRコードが刻印されている。あとでデータを取ろうと思った。 「有機野菜を生産して、レストランやスーパーに卸しているんです。値段もかなり抑えられるようになって顧客が増えてるんですよ」  九条さんの言っている事は本当だろうなと思った。彼らの身に着けているものがそれを物語っている。高級と言えるほどではないが、決して安物ではない。坊やが着ているコートもズボンも、肌触りが良さそうだ。 「私もね、スーパーを畳んだんだ。今はデリカテッセンをやっていてね。センター地区とバトー地区に二店舗ずつあるんだ。機会があったらぜひ」  胸ポケットから名刺ケースを出し、一枚抜き取って田中くんに手渡した。     
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