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「無理だよ、パパ!」
春先のバスルームで、体を洗い終えた私が二人の息子が浸かる浴槽に足を入れようとすると、
上の子がそれを拒んだ。
この時期、浴室暖房をつけていても、濡れた体のままではすぐに冷える。
可愛い我が子の切なる望み、
叶えてやりたいのは山々だが、
この子らの為にも私は風邪をひくわけにはいかないのだ。
「パパだって寒い!」
そう言って私は、お世話にも広くない浴槽に無理やり両足を入れて腰を下ろす。
あふれるお湯は洪水のように、タイルの上の洗面器を押し流した。
浴槽にぎっしりと詰まった親子三人。
窮屈な風呂に下の子が悲鳴に近い文句を叫ぶ。
「せまいせまいせまい!!!」
「大丈夫、こうすれば……」
強がるように私は足を曲げ両の腕で抱え込むと、贅肉が内臓へと押し込まれ肺がひどく圧迫される。
「……ほ、ほら。」
息絶え絶えで、喋るのも困難だ。
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