第1ピリオド

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この部屋は元々タカシの部屋だった。 一つ年下の彼女、リサのほうがむしろ同棲に積極的で、半ば強引に転がり込んできた感じだ。 仕送りしてくれている親の手前、今でも一応リサのアパートは借りたままになっているが、リサの部屋は大学から少々遠く、部屋も狭い。 「部屋遠いなら、ウチにくれば?」 半ば冗談で、タカシは言った。 いや、本人は冗談のはずだった。 そうは言っても、ここも狭いし。 「ホント?じゃ時々泊まらせて?」 そう言うとリサは少しホッとしたような笑顔を見せた。よほど大学に通うのがめんどくさがったんだろう。 そして最初は、リサも週に一、二回ほど泊まる程度だったのが、今では完全に同棲状態で、リサの生活の拠点はこの部屋になってしまった。 リサが自分の部屋に帰るのは週に一度、しかも夜遅くに帰って朝早く大学行く前にタカシの部屋に戻ってくる程度だ。 タカシも、この生活が嫌な訳ではない。 たまに自分の時間が欲しいと思うこともあるが、しばらくこうして一緒にいると、もはやリサがこの部屋にいることが当たり前のように感じられ、ストレスは自分で上手く発散するようにしていた。 ようやく洗濯が終わった。 カゴに取り出し、自分の洗濯物をベランダに、リサのものは部屋の中に干す。 干し方もリサに教わった通り、リサの下着類は外からも見えないように、タオルの陰に隠すように干す。 おそらく二人は、一般の大学生より洗濯物は多い。 普段の衣類に加え、Tシャツや練習用の短パン、ソックス、タオル等々。 それが二人分。暑い時期になるとさらにそれが2セット3セットになることもある。 洗濯物を干し終わり時計を見ると、もう学校に行く時間になっていた。 テキスト類の入ったデイバックを肩にかけ、スポーツバックに今日使うTシャツやソックスなど一式を詰め込み、タカシは大学に向かった。 まだ5月だというのに、今日も暑い一日になりそうだ。
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