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早口でそう言って振り向きざまに走ろうとした瞬間、ハルカが歩道の敷石の段差につまづく。
タカシは、慌ててハルカの腕を引き、抱きとめる。強く引きすぎたせいで、タカシの胸にハルカが顔を埋める格好になった。
慌てたタカシがハルカを引き離そうとすると、ハルカはギュッとタカシにしがみつき、タカシの胸に顔を埋めたまま泣きそうな声で呟いた。
「もうちょっと、あと少しだけ、今だけでいいから、このままでいて…
自分のことは自分でケリつけるから。
だからあと少しだけ…」
その頃。
シンヤとリサは買い物にも行かず、タカシのアパートの前の歩道の柵に腰掛け、タカシを待っていた。
「シンさん、なんで芝居までして二人で行かせたの?」
「お前も分かってるくせに」
「なんのこと、かなあ」
「ルカは、ちゃんと失恋しなきゃいけねーんだよ」
「ええーっ、ルカさんは誰が好きな人がいるのっ?」
「お前、殴るよ」
「すいません…」
「で、どうする?今夜タカシが帰ってこなかったら」
「どーしましょうかねえ?」
「なんだかすげー自信ありげだな」
「モチのロンですよ。アタシ、タカシに愛されてますし、タカシを信じてますから」
そう言ってリサは笑った。
その自信に溢れた顔を見て、シンヤは思った。
“ルカは競争相手が悪かったよなぁ”
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