家風呂

　家に帰ったら何を差し置いても風呂に入る。それが俺の日課だ。
　一戸建てとはいえ、祖父の代からの家は老朽化が著しいが、風呂だけは別格だ。
　掛け湯をし、ゆったりと湯船に浸かる。俺の入浴においてこれは何より重要なことだ。
　すぐに湯のあちこちから水泡が立ち上ってきた。
　小さな悲鳴を上げながら泡が次々消えていく。やがて水泡はまったく出なくなり、俺の体もすっきりと軽くなった。
　俺の父方の血族は超霊媒体質で、普通に暮らしているだけでそこらの霊を引き寄せてしまう。幸いにも目立った霊障はないけれど、常に若干のだるさには悩まされ続けてきた。
　それがこの風呂場のおかげで解消されたのだ。
　祖父が、物凄い霊力を持っているという知人に頼み、神木に念を込めて作ってもらった特製の浴槽。入っただけで憑依していた霊達はたちどころに浄化される。
　風呂に入ること自体好きだけど、家の風呂の、温泉とかでは得られない、芯から体が軽くなるこの感覚がたまらなく心地よい。
　家風呂最高！　この癒しの時間があるから苦労の多い毎日を乗り切れるってもんだ。

家風呂…完