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翔一くんの家に着くと、二人はすぐにテレビゲームをはじめました。
「翔一、湯太くん。そろそろお風呂に入りなさい」
長い間ゲームをしていると、翔一くんのお母さんにたしなめられ、壁の時計をみると針は8時をさしていました。
「もうこんな時間かよ。湯太、先に風呂入ってこいよ」
「え、1人で?」
「当たり前だろ」
いつも、おばあちゃんと入っていたので1人で入った事がなく、戸惑っているとすかさず翔一くんが「お前、もしかして1人で入れないのかよ。ダセエな」とからかいました。
「そんなわけないだろいつも1人で入ってるぜ!」
ムキになって、とっさに嘘をついてしまいました。
その時、電話が鳴りました。翔一くんのお母さんが「もしもし」と受話をとりました。
「えっ、本当ですか?分かりました急いでお送りしますね」
受話器を置くと、慌てた様子で「湯太くん、急いで帰る支度をして」といいました。
「え、さっき来たばっかりなのに」
「湯太くんのおばあちゃんが、救急車で運ばれたの。それで、今病院にいるんですって」
その言葉が受け入れきれなくて、その場を動くことが出来ませんでした。驚きで固まったままの湯太くんを翔一くんとそのお母さんは病院まで車で送り届けてくれてくれました。
病院に到着すると、入口の前で湯太くんの両親が待っていました。
「申し訳ありません、ご迷惑をおかけして・・・」
湯太くんの両親は翔一くん達に深く礼をしました。
顔を上げると、目が2人とも少し赤くなっていました。
「気にしないで下さい。それより早くおばあさまのところに行ってあげて下さい」
「ありがとうございます」
そうして両親に連れられ、おばあちゃんの待つ病室へ向かいました。
病室のドアを開いて中に入るとピッピッ・・・と、心拍数をあらわす機械音がしました。
そして沢山のチューブに繋がれたおばあちゃんがベットに横になっており、看護師さんとお医者さんがその様子を見守っていました。
「おばあちゃん!」
湯太くんは駆け寄っておばあちゃんの手を握ります。でも、いつも頭を撫でてくれたシワシワの手は信じられない程冷たくピクリとも動きませんでした。
「先生・・・」
すがるように湯太くんのお母さんは先生を見ましたが、先生は静かに首を振りました。
と、同時にピーと機械音が響きわたり、おばあちゃんの心臓は止まってしまいました。
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