向日葵は太陽を見る

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「戸山君と神保君。どっちがフコウなんだろう」  私は二人を思い浮かべては、よく考えてみた。  家庭内暴力。  当時、私達はDVという言葉を使った事はなかったが、戸山君の状況を指す言葉だと、みんなは思っていた。  彼はいつも、見える処に怪我をしていた。  お父さんと二人暮らし。  お母さんは夜逃げして、お父さんは飲んだくれ。  給食費を払えなかったが、みんながちょっとずつオカズやパンを分けていたのを、先生は見て見ぬふりをしていた。  戸山君は自分の境遇を隠さないで、周囲の人に喋っていた。同情とか大嫌いだったろうに、フコウを上手に利用していた。  神保君は同情が大っ嫌いだったから、自分の境遇を隠していた。  どちらの境遇が、より酷かったかは、誰にもわからない。  ううん。本人達だって、わかっていなかったんじゃないかな。  私達の世界は、親を中心にして回っている。  理科で習ったみたいに、私達は向日葵みたいに親を見つめながら暮らしている。  私のお父さんてだけで、私にとってお父さんは大事な人だし。  神保君のお母さんてだけで、神保君にとってお母さんは大事な人なのだ。  ……それは、双子なのに片っぽを贔屓しちゃう親や、子供の衣食住を保障する義務を放棄している親であっても、だ。  親は子供を嫌いになれたりするけれど、子供は親を嫌いにはなれない。  親がいつかは自分を見てハグしてくれるんじゃないか、て思いながら生きている。  子供は『親があんなに酷いのは、自分が悪いせいではないんだろうか』って思っちゃう生き物なんだ。 「私達、大変だよね」  おどけて、私が言った。神保君は目を白黒させた挙句。 「別に」  なんて言う。 「……そこは、『そうだな』って同意する所だと思うよ」
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