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神保君に、お父さんのスーパーでのバイトを紹介してあげた。こっそりとバックヤードで働かせて貰ってるらしい。
バイト代が入るから文房具も買えるようになったし、お惣菜の残り物も貰っているようだった。
スーパーには、リサイクル品を世界の恵まれない人達へ届けるセンターもあったから、神保君はサイズの似合うダウンを貰ったりして、暖かそうになった。
神保君は食べる物を確保できるようになったせいか、あまり授業をサボらなくなった。
もう、放送室に来る必要はなくなったのに、神保君は相変わらずやってくる。
二人して湯沸かしポットが沸くまでぼうっとしてたり、消費期限五日前のインスタントラーメンをすすってたりする。
そして部室で勉強もするようになった。
お腹がいっぱいになったら、学業に興味が出てきたらしい。
「いーんちょ、これ教えて」
「いーんちょ。この問題はこの数式当てはめればいいのか?」
おかげで、私。
次のテストで三科目も戸山君を押さえてトップになれたよ。
でも、神保君はテストを受けようとはしなかった。
「いーんちょのおかげで、腹減って眠れないなんて事は無くなった。バイト代で灯油を買えるようになった」
北海道の中でも、豪雪地帯として知られている私達の街。
中でも灯油の確保は死活問題だ。
ボイラーとか、あるいはストーブ。暖房がないと、断熱性の高い家の中でも、結構やばい。
そして雪かきは、もはや冬のというより歯磨き位に、ルーティンワーク。
スーパーで知り合った人の所にいって雪かきを手伝ってお小遣いを貰ったり、ご飯もご馳走になっているらしい。
「でも、全日制の高校に行ける程、金は貯まってないんだ」
寮のある会社に就職して、働きながら夜間高校に通って大検を取るのだと言っていた。
自分で進路を決められることに、神保君は目をキラキラさせていた。
食べる物を自力で得る事が出来る、それはお母さんからの経済的支配からの脱却を意味していた。
『人生は、自分の自由に出来る』って、自信がついたらしい。
『神保君なら、奨学生になれるよ』って、某学園のパンフレットを渡そうと思っていたけど、好きな人がすごく嬉しそうなんだもん、言い出せないよね。
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