破棄されたテスト用紙

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 神保君を観察しているうちに、色々な事に気が付いた。  走るのもバスケも得意。だけど、手を抜いてる。(というより授業に出ない)『掃除をして』と注意すれば、してくれる。  動物は好きみたい。  散歩に連れられていた犬を撫でまくっていた時の笑顔は、構われていた犬よりも嬉しそうだった。  先生方や真面目な女子達は、神保君を避けているか怖がっているか、嫌っているかだった。  だけど同じように嫌われている男子達からは、人気があったみたい。  教室に居れば、『神保君』って呼ばれて囲まれていたり、廊下を歩けばヤンチャっぽい後輩に頭を下げられていた。  あとはエッチだったかも。  更衣室が改修している間、男子は教室、女子は体育館の舞台で暗幕を引いて着替えてた。  暗幕には、煙草の火で開けたような丸い穴があって、そこから男子が覗いている時も。  舞台の上に小さな放送室があって、そこから男子が女子の着替えを見降ろしている時も。  気にしているせいか、いっつも神保君が居るように思えた。  女子も気が付いていて、男子に詰問するんだけど誤魔化された。そんな時は神保君は居なくて、『逃げたな』って私は考えていた。
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