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ある日。
裏に神保君らしき人が移動するのを見かけた私は、後をつけてみた。
そして息を飲んだ。
真冬なのに、神保君が上半身裸になって雪の上に寝転がってた。そして神保君の腕と言わず胴体と言わず、痣だらけだった。
私の立てた物音が聞こえてしまったのだろう。
神保君はちら、と私を見た。私が固まったままでいる事を確認すると、そのまま雪の上に寝転んでいた。
「……」
私が何も言わなかったからか、しばらくして神保君は起き上がるとシャツを着た。
その時に観てしまった。
彼の背骨に、一列に捺された丸い痕。
それが何かは、知っていた。
戸山君が自分の腕に押し付けられた同じような痕を指して、『親父に煙草の火を押し付けられた痕だよ』と教えてくれていたからだ。
古い痕と比較的新しい痕が混ぜこぜに並んでいたが、背骨にキチンと沿っているのが几帳面にすら思えて、やった人を余計に気味悪く思った。
神保君は、一際赤く爛れた箇所を雪で冷やしてたのだ。昨日、もしかすると今朝、付けられたものだった。
「もしかして、お母さんにタバコを押し付けられたの」
私の声は震えていた。
喧嘩の強い神保君が、大人しくこんな事をされる訳がない。しかも、何度も何度も。
神保君が黙っていた事が、答えのように思えた。
「ねえ、民生委員さんに連絡した方がいいよ」
立ち去りかけていた彼の背中に私は声を掛けた。戸山君はよく民生委員にお世話になっていたのだ。
神保君は、また私の事をチラッと見た。
「いーんちょは、コレが何か、知ってんだな……ああ、アイツネタか」
アイツとは、きっと戸山君の事だ。
美優は、戸山君と付き合っている事を先生からお父さんに密告されないように、カモフラージュでよく私を混ぜてデートしていたからだ。
そのせいか、私が戸山君と付き合っていると勘違いしていているクラスメートもいた。
「違……っ、」
何故か、神保君には誤解されたくなかった。
「ミンセー、うぜぇ。だりぃから、言うなよ」
もしかすると、近所の人が既に通報してたのかもしれない。
「でもっ、」
すると戻ってきて私を睨んだ。
「いいから、言うな! この事がバレたら、いーんちょをぶっ殺すからな!」
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