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脅されたって、引き下がるものか。
「わかった。言わない。その代わりに放送室まで来てよ」
「んあ?」
思ってもみなかった事だったんだろう。私に無理難題を言われたみたいに、神保君は眼をぱちくりした。
このチャンスを逃しては、ならない。私は一生懸命、言った。
「来てくんないと、私が神保君をぶっ殺す」
実際には、殺し合いになったら絶対に私が神保君を殺せないと思うんだけど。
でも、私の心意気は感じとってくれたらしい。
「……変なオンナ」
”逆らわない方がいい”とでも思ってくれたのか、大人しく付いて来てくれた。
放送室は、私の城だ。
学年トップスリーの一人で、毎年学級委員長をしている私は、先生からの信頼が厚い。お昼時間に、『中学生に好ましい』曲を流すことを条件に、鍵を預かっていた。私は授業がサボりたい時には、好き勝手に出入りしていた。
「どうぞ」
「……おう」
神保君はキョロキョロしていた。
私はくすりと笑った。
「体育館の二階と、そんな変わんないでしょ」
「おう……って覗いてねぇし!」
うっかり頷いてしまった神保君は、慌てて言い訳をしてみせた。
「誰もそこまで言ってないよ」
私はクスクスと笑った。
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