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放送室には、電気ボットを置いていた。勿論、カップ麺の他にはレトルト米、フリーズドライのスープに野菜、缶詰。
レンジにカセットコンロもある。
リサイクルセンターや廃品置き場から使える部品を失敬してきて、自分で修理したものだ。
私は編み物したりするより、ハンダ付けとか旋盤を動かしたりする方が好きだった。
その他は、蝋燭や手回し式ラジオやペットボトル。
昼寝する時のブランケットや凍死防止用寝袋にホッカイロも。あ、非常用トイレが無かった。そのうち調達しておこう。
……ナプキンをしまってあるのまでは、流石に見せなかったけどね。
何かあった時、私はここに籠城しようと思っていた。
神保君が備品の数々に、目をまん丸くした。ついでに彼のお腹がきゅううっと鳴った。
「食べていいよ」
私は出来るだけ、さりげなく言った。
「……今、財布持ってねぇ」
神保君は同情されたくないようだった。
「お父さんのスーパーの、賞味期限五日前。食べてくれると助かる」
時折、店長さんがスタッフに配っているのを知ってたから、何種類か貰ってきてあった。段ボールの中の宝物を見せた。
神保君の喉がゴクリと鳴った。
私は聞こえなかったフリして、彼に背を向けた。
「お湯を沸かすね」
二人でお湯が沸くまで、ぼんやりしていた。
インスタント焼きそばと、お味噌汁の元に野菜をドサドサ入れて、デザートはみかんの缶詰。
おもてなしとしては、なかなかじゃないかな?
神保君は満腹になったみたいで、ソファにごろりと横になった。すー、すー、と寝息が聞こえてきた。
私はそうっと部屋を出ていった。
次の日から私は神保君を見つけると、『放送室に来ないと、ぶっ殺す』、食料を見せては『食べてくれないと、ぶっ殺す』と脅した。
神保君は渋々、放送室に来てくれるようになった。
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