1.孤高の恋

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 好きになってはいけない人を好きになる。  どこかで聞き慣れたような言葉だ。  ドラマなり、映画なり、漫画なり、何かしらで一度は耳にしたことがある気がする。 「好きになってはいけないと思っていたのに。でも好きになっちゃったの」 「止められないほど惹かれてしまったんだ」  男女問わず、きっと人を好きになる、ということは、ある意味、不意の出来事からだったり、まるで前から決められていたかのように、セッティングされた環境から始まったり、それぞれだろう。  何かのきっかけで、恋に落ちることもある。  あくまでも自然体で過ごしている環境の中、誰かのふとした優しさや、ふとした言葉から好きになることもある。  そんな風に、徐々に、相手の存在が大きくなっていくこともあれば。  まるで、大きな雷に打たれたかのような勢いを感じる、そんな一目惚れも同時にある。  いろんな状況で、条件で、人は人を好きになってゆく。  じゃあ、僕は。  一体、どんな課程で彼女に惹かれたのだろう。  200人ほどいる人数の中の、ただのひとり。  それだけのことだった。  それだけのことのはずだった。  僕は、本当にこれといった理由がなく。  彼女に惹かれてしまったような気がする。  気づいた頃には、200人という大きな団体は、彼女を含め、新しい門出へと旅立ち。  僕は、新たな200人を迎え、通常通り、変わらぬ生活を送っている。  違うのは、毎日のように顔を合わせていた、彼女がいなくなったこと。  新しい200人との生活が始まってから、僕は、歯が抜けたような物足りなさや、さみしさを感じていた。  わかっていた。  そうなるであろうことは。  けれど、僕は何も出来なかったし、しなかった。  彼女がいた、という存在の大きさを、砂を噛むような気持ちで毎日確かめては、どうにもならない想いを抱えて、眠りにつく。  なんとも言えない、不快感のようにも近い気持ちを抱えながら滑り込む布団の感触は、冷たくかさついてさえ思えた。  どうしようもない。  どうしようもないじゃないか。  僕は、毎日、かさついた布団の中で、そう呟く。  心の中で、繰り返し、繰り返し。  そうすれば、気持ちが楽になればいいのに、残念ながらそうはいかない。  シャワーを浴びた痕のような爽快感を感じたくても、残念ながら日々、僕はどうにもならない感情をもてあましている。
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