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鬼神の血族
***
薫子の言う神代家は、山間にある旧家だ。
その昔、鬼と神とが結ばれたあと、生まれた二人の子供が、それぞれ別の部族の娘を娶ってから、事は始まる。
二人の子供は、親の力の性質を、半分ずつ受け継いだ鬼神。
娶ったのは、鬼と神。
それ以後の鬼族と神族との交わりはなく、子孫はどちらも人と交わることとなったが、神族の血を濃く引く、神の末裔はそれを好まず、また、自分たちと最も近く同時に遠い血族である鬼の末裔とは、関わりさえも断った。
よって、神の末裔は近親婚が続き、子孫は減り続け、一方の鬼の末裔は、何にも囚われることなく子孫を増やし続けた。
当然ながら、その末流ともなれば、辿るのは困難。
知らず許した婚姻から生まれたのは、鬼と神、両方の能力を授かった者。
当初、その子は鬼であると見られた。
だが、その性質はとてもそれだけのものとは思われず、神の末裔は認めざるをえなくなる。
自分たちの体の内にある、彼らが忌み嫌う部族の血。
絶えて久しいその血の顕現。
それが、自分たちの求めた至高の血とひとつの生のなかにある。
しかもそれはまったく同等の配分…ほんの末端であるにもかかわらず!
追い打ちをかけるように、いとこ同士の婚姻のうちに、生まれたのは力のあまりに大きい、鬼の性質をもつ子。
即座に手を打たなければならなかった。
生存本能の強い二人の赤ん坊は、自分を傷付ける者に容赦をしない。
協力を願い、捜し当てた鬼の末裔の長は冷ややかだった。
鬼は人の血に棲むものではない。
心にこそ巣食っている。
捕らわれたのは、濃すぎる狂った血のせい。
しかし放っておくわけにもいかない。
子はどちらも、とてつもない力を持っていたのだ。
平穏に暮らす鬼の末裔にとって、同族の暴走は命取り。
すぐに二人の赤ん坊は鬼の末裔の長の監視下に置かれ、鬼の力を持った子は長の養子に、ふたつの力を持った子は、新たな家名を与えられた。
新たな家名を神代といい、鬼の末裔の家名を鬼頭、神の末裔の家名を神栖という。
定められた名は、今なおその力とともに受け継がれている。
鬼頭、神栖はもちろんのこと。
神代はその性質のため、常に少数ではあったが。
彼らの家はそれでも、空くことはなかった。
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