鬼神の血族

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       ***    二人は…薫子と亮真は、山に囲まれた町に着いていた。 山のなか、というから、どんな田舎かと思って来たのだが、亮真は少々面食らっていた。 実際には田舎に行ったことはないから、かなり偏見の混じった想像ではあったが、それを差し引いても、この町は一風変わっていた。 見れば、町というより街なのだ。 それほど高いビルがあるわけでもなく、人でごみごみしているわけでもない。 なぜこうなのか、もとは判然としないのだが、賑やかで活気に溢れていた。 その町の駅に、二人は50分ほど前に着き、そのまま、遅い昼食を摂るために、駅の回転展望レストランなるものに入っていた。 「で、このどこにそのじいさんの家があるって?」 食事を終えた亮真が、話の続きを促す。 一応、遡れば同じ血、という、みっつの家のことを聞き、薫子がそのうちのひとつ、鬼頭家の次期当主であることと、先ほど会った薫子の兄、基樹が神代家の次期当主であることは聞いた。 『神栖と同じで、鬼頭も神代も一番能力の高い者、大きい者が継ぐの。養子に入って。おじいさまは私の実の祖父だけれど、親が跡を継がなかったから、戸籍上私はおじいさまの子ということになるわ。ちなみに神代の現当主は、そのおじいさまの弟』 『二代続けて兄弟か』 『最近では私たちの家系に近い人が多いらしいわ。鬼頭も神代も。あなたのところは確か直系だけど。血の濃さがものをいうようね』 普段ならいらつくほど、亮真の知識は少なかった。 それをさせなかったのは、説明していたのが薫子だからだ。 「丘のなか」 「あ?」 しまった、考えている間に聞くべきことを言い終わったのか? 一瞬思ったが、薫子が言ったのはその一言だけだった。 代わりに雄弁に語っていたのは彼女の箸。 「あの、丘のなか」 ちょうど真横に、その丘は見えていた。 それを箸で示していたのだが、肝心の亮真は気付いていなかった。 代わりに、薫子の視線を追っていた。 「で?まさか丘の上のあの台地にあるとか」 「言わない。せいぜいその中腹だと思う。少し歩くことになるわ」 箸を置いて、冷水の入ったコップに手を伸ばす。 改めてその容姿に目をやって、美少女のラベルを張るのは亮真。 少々冷めてはいるが、性格はそう悪くなさそうだ。 頭の回転も速い。 母の評価は正しい。 口を開かなければ、かわいい。
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