序章

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 * (山峡国(やまかいのくに)の伝承を少しでもかじった者なら誰でも聞いたことがあるであろうこの逸話は、古書『紅鷹君伝(こうようくんでん)』の冒頭に記されていたと言われている。  あえて断定しないのは、原本がとうに散逸してしまい、確かな証左がないからだ。とはいえ最初期の写本にはすでに同様の記述が見られ、おそらくは原本にもあったはずだというのが定説である。  もちろんそれは、エピソードが実話であるということを証明するものではない。この書物は、伝記の名を借りた歴史物語である。いくらかの史実は踏まえているものの、基本的にはフィクションとして書かれたものだということは忘れてはならない。  たとえば同書には、次のような場面も記されている。)  *
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