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(その人が婿を迎えたのと、父王を亡くしたのがほぼ同時期であったことは、どうやら史実であるらしい。
婿は王位に就かないまま王宮に居を移し、山峡国の統治に当たった。人心の安定と国力の増強を図り、来るべき美浜国との決裂の時に備えたのだ。
もっとも表面的には、両国の同盟関係はもう少し続く。摂政王太子が妃を娶った際には、様々な祝い品を贈った記録が残されている。これに対し、北湖国と美浜との関係は悪化の一途をたどり、やがて開戦に至る。山脈の向こうで起こったこの戦に、山峡は関与しなかったようだ。
一方で、国内の情勢は大きく変わった。国境を守っていた第一王子は乱心により失脚、その母も力を失って王宮を離れ、第二王子のもとに身を寄せる。この第二王子は野心のない人物であったため、内紛は一応の決着を見た。
もとは『紅鷹君伝』から散逸した章の一部だったのではないかと目されている次の逸話は、それからまもなくの出来事であろう。もちろん、歴史的文献による裏づけはない。)
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