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その朝、王宮に客人が訪ねてきた。
いつか隣国の太子と対面した謁見の間に、夫と共に並んで座る。向かい側には、丸々とした体格の若者が、不器用に胡坐をかいていた。
その隣には、齢十五、六ばかりの小柄な娘が正座している。指をついて深く礼をし、ゆったりと頭をもたげて、「ウララと申します」と名乗った。
広い額のなだらかな生え際、小さな鼻と耳、ふっくらとした唇。頬がほのかに赤く染まり、柔らかそうな髪が肩にかかっている。黒目がちの、仔猫のように丸い目。淡黄色の衣をふわりとまとった令嬢は、誰の目にも愛らしい乙女であった。
「ねえさま。ウララはかわいいでしょう」
いつものように、東原城主は満面の笑顔だ。
「わたしは、ウララがすきです。ねえさまとおなじくらい、すきです」
「まあ」
少し恥ずかしそうに、娘が許婚を振り返った。
「ねえさまは、どうですか。ウララがすきですか」
「若さま。わたくしと姉上さまは、今日、初めてお会いしたのですよ」
袖をそっと引きながら、優しくたしなめる。育ちのよさが透いて見える、たおやかな口調だ。
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