第1話【奇跡のちから】

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キララは部屋に戻るとワンダが平和そうに寝ていた。 一人っ子のキララは、いつもワンダに話し相手になって貰っていたのだが、今日からはワンダとの会話が楽しくなりそうと思うと嬉しかった。 それに今日は智樹といっぱい会話出来たのを考えると幸せいっぱいの気持ちになれた。 父親が仕事から帰宅した所で、一家の晩御飯の時間になる。 父親の帰宅は19時から20時くらいなので、普通の家庭の夕食には少し遅いものの、物心付く頃からの馴れでキララは気にしていない。 晩御飯を食べた後は風呂に入り、その後一時間ほど宿題や復習を行うのがキララの日課だ。 ワンダはキララのベットで睡眠中。 冬にワンダが病気になって以来、ワンダはキララのベットでしか寝なくなった。 そろそろ眠くなったキララはベットの半分を占領しているワンダの隣り合わせになり布団に潜り込んだ。 キララがうとうとと夢を見かけた時.... 『わん!わん!わん!』と耳元でワンダが激しく鳴いた。 「どうしたの?ワンダ。」 『大変だ!キララ!起きて!!』 『うわ、ワンダが喋った....ってそうでした。わすれてたよ。』 『キララ!嫌な臭い!凄く嫌な臭いだよ!』 正直ワンダが何を言っているのか理解不能だ。 これでは智樹が会話の意味が無いと言ってたのが凄く実感できた。 ともかくワンダが騒ぐので、キララはワンダを抱いて庭に出てみた。 すると犬のワンダじゃなくても嫌な臭いというものを実感出来た。 なんというか焦げ臭いのだ。 「....これって火事?」 向かいの雑居ビルからの臭いっぽいが、特に火が出てる様子はなさそうだ。 キララは知らなかった。 火事の場合、出火してない状態の火事がもっとも危険な火事だと言う事を.... 消防士が事故で殉職するケースのトップがこういう火事だ。 建物の壁や窓やドアから何かの拍子で外気が入るとバックドラフトという恐ろしい大爆発現象が発生する。 もしガス管からの漏れが重なっていれば、ここいら辺りは消し炭になりかねない。 『キララ!あの臭いをやっつけよう!』 ワンダはヤル気満々だが、普通に考えれば一刻も早く両親を起こして消防署に連絡するのが基本だ。
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