第1話【奇跡のちから】

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「ママ!遅刻しちゃうよ!もっと早く起こしてよぉ!」 朝から騒がしい女の子。 「ちゃんと声をかけたわよ。キララちゃんが起きないからでしょ?」 キララと呼ばれた女の子が母親に注意される。 「わん!!!!!」 キララの飼い犬も母親に同意するかの様に鳴いた。 キララはとても寝起きが悪く、母親の声掛け程度では二度寝三度寝当たり前で、飼い犬が母親の意向を察してキララの顔をベロベロ舐めて目覚めるのが日課と化している始末。 「ワンダ、いつもありがとぉ!」 ワンダがキララに向かってお腹を見せてベロを出した。 それを見たキララが飼い犬のワンダのお腹をワシャワシャと撫でる。 「キララ!いい加減にしなさい!遅刻しちゃうんでしょ?」 「うわ、そうだった!」 バタバタと部屋に向かって自分の赤いランドセルを取りに走る。 「行ってきます!!」 慌てて靴を履きながら、玄関にいる母親に声をかけた。 「いってらっしゃい。帰りがけ気をつけるのよ?」 「いってらっしゃ~い。」 キララは母親の返答が二重に聞こえたので思わず振り向いた。 玄関に立っているのは母親とポメラニアンのワンダだけだ。 一瞬違和感を感じたものの、遅刻寸前なのと玄関前に止めてある自動車の運転席で待機している父親を見ると、慌てて自動車の後部座席へと乗り込んだ。 「パパ!しゅっぱ~つ!!」 キララの掛け声に苦笑いしつつ、キララの父親は車を発車させた。 キララの通う小学校は子供の足で約20分で、車だと5分程度の距離なのだが、ここ最近の治安と風潮で親が送り迎えをするか友達同士で登校するのが当たり前となっている。 「キララ、学校は楽しいかい?」 「んん?普通。」 父親との毎日交わされる御題目の様な会話を車窓を見ながらボンヤリ答える。 キララは今月に小学校四年生に進学、季節は四月になりキララの住む北海道の旭川市でも雪がほとんど溶けていた。 車道に並ぶ桜の並木はまだ蕾の段階で、旭川市では桜のピークはゴールデンウィーク頃となる。 父親は混雑する校門の手前100メートルに停車させた。 「パパ!行ってきま~す!」 「気をつけてな!」 それだけ言うと父親は会社へと出勤した。 登校の時は父親の出勤ついでに送ってもらうが、下校時は友達同士で帰宅している。
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