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「遊ぼ?ねぇねぇ遊ぼ?お腹撫でるか?」
ワンダが尻尾をフリフリしながら三人の回りをクルクル回っている。
肝心な三人と言えば、少々現実逃避気味であった。
漫画でデフォルメされたキャラが喋るならアニメっぽいのだが、リアルな獣が喋ったとなると非常にシュールな光景となる。
っていうか少し気味が悪い。
「なあワンダ、お前は本当に犬なのか?」
智樹がワンダに語りかけてみた。
「犬?犬ってなあに?ワンダはワンダだよ?」
犬という名称は人間が勝手に名付けているだけで、犬は自分が犬という自覚が無いのは当然である。
余談だが猫は自分が猫という実感がある。更に人間はでっかい猫で、鳥などは空を飛べる猫と思っているらしい。
「ねぇねぇキララちゃん。やっぱり漫画みたくワンダちゃんが喋るのを隠すの?」
漫画だと特殊な動物をかくまう物語は定番である。
「まともに考えると、パパやママに隠しっぱなしとか無理があるよ?だからもうすぐママが帰るはずだからまずは相談してみるよ。」
至極まっとうな結論である。
その後、キララの母親が帰宅するとするまでは三人は色々と質問してみるものの、正直なところワンダが喋ろうと喋るまいと同じ反応だ。
元々ワンダは態度や表情が豊かなので何を考えているか丸わかりだからだ。
そんな折、キララの母親が丁度帰宅した。
「ママ!お帰りなさい!ママ聞いて!ワンダが喋ったんだよ!」
娘が興奮しながら訳の解らない事を言っているのはともかく、キララの幼馴染みである白井家の双子がいたので、母親は智樹と美樹に挨拶した。
その間にワンダは母親の足元で「お帰り!」を連呼しているのだが....
いち早く察したのは智樹だ。
「ちょっとこっちに行こうぜ!!」
そう言ってキララと妹の手を引っ張り、キララの部屋に向かった。
何の躊躇もなく智樹が部屋に入ったものだから慌てるキララ。
(散らかっていたらどうしよう)とか(下着とかしまい忘れとか無いかな)など色々想いが錯綜したが状況を考えるに、とりあえず我慢する事にした。
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