タイルノキモチ

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思春期を迎えた彼らは体が大きくなったこともあり、もう四人で賑やかに入ることもなくなりましたが、それぞれに色々と思うことはあった御様子で湯船に浸かりながらポツリポツリと口を開いては独り言を私に聞かせて下さいました。 長男の勝利さんはあまり悩みを打ち明けない方ではありましたが、一度だけ、恋の悩みを呟いたことがありました。 また、次男の勇二さんと三男の賢三さんは野球一筋な方達でしたから、普段は快活でらっしゃいましたが、試合に負けてしまった日などは人知れず湯船に悔し涙を落とした事もありました。 四男の大和さんは幼い頃のあどけなさはすっかり姿を消し、しっかりものの若者に成長を見せてくれ、受験勉強の大変さを嘆かれておられました。 勝利さんや勇二さん、賢三さんの三人はそれぞれ学校やお仕事の都合もあって早々に別のお家にと出て行ってしまわれ、お父さんやお母さん同様に僕もどこかが欠けてしまったようにチリチリとした痛みがずっと取れることなく、寂しさを感じておりました。 でも、暫くするとそれぞれお嫁さんを連れて遊びに帰って来てくれました。 お母さん以外の女の人がここに来るのは初めての事だったので少しだけ照れてしまったのは内緒にしておいてください。 そして、徐々に増えていった家族。
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