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いろんな彼を観たことがある。 高校生だったり、やさぐれた青年だったり、甘ったれのお金持ちだったり、父親だったり、ジェイソン・ボーンみたいな破格だったり、人間じゃなかったり。 その中の、だれとも違う彼を、初めて見た。 だれとも違うのに、そのだれもであるような。 「俳優って不思議なひとたちなのね」 「はあ?」 心底めんどくさそうな表情だった。あ、そういう顔はあんまり記憶にないかも。 「ねえ、なんであたしが見えるの」 「そういう家系だから。おれにできることはなにもない。とっとと成仏するんだな」 そう言い捨てて、ふたたび布団に潜ってしまった。 髪の毛だけが、ふわふわっと枕にこぼれてる。 なぜか笑いそうになった。 うん、幸せだ。 たぶんわたしは今、世界で一番、幸せだわ。
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