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伸ばした指先は、すかん、とマグカップの取っ手をすり抜けた。
匂いも湯気も感じるのに、つかむことはできない。
自分はほんとうに、この世から隔てられたのだ、とそのとき突然、理解した。
喉に、爆発しそうななにかが押し寄せてきた。
好きな人に、触ることはできない。
好きなものを、食べることも。
美しい花束に、顔を埋めることも。
「……どうした?」
気遣わしげな表情だった。
やさしいひとなのだ、きっと。
思い描いた通りの。
韓流ドラマなら、ここで、ほろりと涙をこぼすところだろうけれど、残念ながら自分にそんな芸当はない。
「……なんでもない」
アニ、だったっけ、韓国語だと。
ん?
あれ?
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