②記憶と思い出

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僕は写真が大っ嫌いだった。 否、過去形ではなく現在進行形で。 写り込む側になってしまうと、過去ができてしまうからだった。 過去の自分を未来に残す必要なんてあるのだろうか。 「残す」という概念からして、記憶と思い出は少なからず異なったものをもつと思っている。 思い出せるものは思い出、思い出せないことは記憶。いつだってそうだった。 じゃあ思い出せないものの記憶になんの価値があるというのだろう。 その気持ち悪いくらいに温かい胸に閉じ込められた、いつまでも忘れない記憶、忘れられない記憶。 早く解放してあげたい。 そんな僕の小さな願いでさえ届かないこの世界はよくできていると思う。
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