氷海鳴き

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氷海鳴き

 きこえる、はじまる。 「しばれてたからなあ。海みたっけ、真っ白だ」  はじまる、今年も。  私は窓を開けると、しんと冷えた空気を肺いっぱいまで吸いこんだ。放たれた窓から入りこんでくる真冬の風に部屋ごと抱きしめられ、数秒ほど経てば、眼前に海の気配を感じるのだ。  それは待ちに待った日。白の日。  今日は特別な日。  氷に覆われた海のまちはひときわ静かに朝を迎え、流氷と共にやってきたものを、私は取り戻す。 ***
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