日常と非日常

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崎谷 周平。 地元の普通高校に通う、普通の高校1年生で、今日は普通に卒業式だ。 特に親しい卒業生も先生もいないのだから、できる事なら、この類のセレモニーには極力出たくないのが彼の本心だった。 「んんー…はぁ。卒業式…。考えただけで吐き気が…」 「卒業式」自体が嫌な訳ではなかった。 そこに飾られている「花」が苦手なのだ。 「花の声」が聞こえてしまうから。 そこら辺に自生してる花はまだいい。あいつらは笑うか、たわいも無い会話をしてるかどっちかだ。 蜂が来た、雨が降りそうだ、鳥がフンを落とした。何がそんなに嬉しいのか分からないが、そんな事でいつも笑っている。 気味は悪いが、マシだ。 最悪なのは切り花だ。 ヤツらは殺されたのに、生かされている。 恐らく相当辛いのだろう。 浅い呼吸を繰り返し、絶望に支配され、しゃべることはない。 ただ無言で訴えてくる。 殺してくれと。 それが華々しい場所であればある程おぞましく思える。 想像してみて欲しい。幸せいっぱいの花嫁が手にしているブーケから、殺してくれと訴えられる状況を…… 周平は物心がついた頃から、この特殊な能力を自覚している。 その事に最初に気付いたのは5歳の春。祖父の葬儀の時だった。
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