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大人たちは慌ただしく葬儀の準備をしていた。比良野村のしきたりで、葬儀は亡くなった者の家人が全て執り仕切きらねばならない。
業者には頼れないので、近しい親戚から遠縁の親戚まで駆り出されていた。
そんな中、子供は邪魔だから外で遊んでいなさいと言われ、5歳の幼い周平は裏庭で遊んでいた。
周平の母親はいわゆるネグレクトで、子供の面倒など一切見ない人だ。この時の彼女は準備の忙しさを理由に、子供の面倒を見ない親ということを親族に気取られないよう必死に振舞っていた。
そんな周平の事を唯一気にかけてくれたのが、夫を亡くしたばかりの祖母だった。
「周ちゃん。おばあちゃんも役立たずだから、一緒にお外で待ってようか」
今の周平であればこの時の祖母を気遣えただろうが…
「おばあちゃんも、あんたはいらないって言われたんだ」
自分と同じ境遇の仲間が出来たと、純粋に嬉しく思ってしまった。
季節は春。
本来ならばウキウキと心が躍るこの季節に、2人の心は、言い知れぬ喪失感で満たされていた。
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