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「ねぇ、おばあちゃん。これから雨がふるんだって。」
さっきまで自分がいくら話しかけても反応しなかった周平が、突然そんな事を言い出した。
今日は雨が降る予報は出ていない。
この子の心が、この恨めしいほど眩しい光を拒絶しているのだと思った。
夫を亡くしたばかりの自分の心もまた、雨を望んでいたのかもしれない。
「そうだねぇ。雨がふるよ、きっと」
慰めるつもりでそう言った。
この子を否定したくなかったのだ。
しかしそれは裏目に出た。
「おばあちゃんもお花の声が聞こえるの?」
………!
しまった、そうゆう事なの。
この子は寂しさのあまり、頭の中で「おともだち」を作ってしまったと思った。
安易に同意するんじゃなかったと、彼女は心の底から後悔した。
しかしその日の夜、本当に雨が降ったのだった。
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